フェルとオルタス
- 5月14日
- 読了時間: 4分
更新日:5月16日
― 狼犬とラブラドール・シェパードで見えた「成熟した距離感」の違い ―
アルテミス通信第20号 CASE 02

■ はじめに
本日、6歳の狼犬系個体「フェル」と、
6歳のラブラドール・シェパード系個体「オルタス」
の観察を行いました。
フェルは5カ月齢で去勢手術を受け、幼少期から訓練を受けてきた個体です。
また、オーナー様のお話では、遺伝子検査で約68%がウルフ系統とのことでした。
二頭は同じ空間で行動していましたが、
人との関わり方
空間の使い方
行動の出し方
にはかなり大きな違いが見られました。
今回は、その初期観察を記録として残したいと思います。
■ オルタスの反応(ラブラドールとホワイトシェパードのミックス)

オルタスは未去勢雄で、とても行動的でした。
環境への反応も速く、
人にも自分から近づいてきて、
👉 「撫でてほしい」
という行動を見せていました。
また、何かを訴えたい場面では、
👉 吠えて反応を求める様子も見られました。
ただ、その後、
空間が安定し自由に動ける状態になると、
👉 吠えはほとんど見られなくなりました。
これは、不安というより、
👉 「状態を変えたい時に声を使っている」
ようにも感じられました。
食餌や給水でも積極性が強く、
👉 まず前へ出るタイプでした。
■ フェルの反応 (狼犬)
一方、フェルはまったく違いました。
まず、
👉 人へほとんど近づかない
という特徴がありました。
こちらが近づくと、
👉 距離を取る
👉 隠れる
行動が見られ、
自分から接触を求める様子はほとんどありませんでした。
しかし、
強い攻撃性は感じません。
むしろ、
👉 「人に強い関心がない」印象でした。
また、今回の観察中、
👉 フェルは一度も吠えませんでした。
常に周囲を静かに確認し、
空間を読んでいる時間が非常に長く感じられました。
■ アマーリエ(シェパード雌10歳避妊済み)との場面
常在犬アマーリエとの接触では、
最初に積極的に動いたのはオルタスでした。
フェルも一緒に動いていましたが、
👉 自分が中心になるというより、
👉 流れに合わせている
印象がありました。
一時的に追跡行動が強くなったため、
途中でこちらが動線へ入り、
👉 空間を切る介入を行いました。
すると群れの流れは自然に落ち着き、
大きな興奮には発展しませんでした。
■ 「成熟した動物」の感覚
今回、フェルを見ていて特に印象的だったのは、
👉 「人間の介入を必要としていない感覚」でした。
一般家庭犬では、
・人へ確認する
・人へ依存する
・人へ訴える
行動がよく見られます。
しかしフェルには、
👉 「まず自分で判断する」
静かな独立性がありました。
それは、人間に反抗しているわけではなく、
👉 すでに一個体として完成している
ような感覚でした。
また、必要以上に興奮せず、
吠えて空間を変えようともせず、
👉 距離を使って自分を保っている
印象がありました。
■ 狼の特徴との共通点
もちろんフェルは、
去勢され、幼少期から訓練も受けており、
現在は家庭犬として管理されています。
そのため、強い攻撃性は感じませんでした。
しかし、
👉 「声で環境を変えようとしない」点や、
👉 「まず距離を取る」行動には、
狼の特徴を比較的強く残している可能性を感じました。
狼は一般的な家庭犬ほど頻繁に吠えず、
👉 空間
👉 距離
👉 移動
👉 気配
によって状態を調整する動物です。
フェルにも、それに近い静かな空気がありました。
■ 一考察
現在の家庭犬は、
人との関係を中心に生活しています。
そのため、
👉 人へ訴える
👉 人へ確認する
👉 人に安心を求める
行動が強くなっています。
しかし今回フェルを見ていると、
👉 「人を必要としない動物」
というより、
👉 「まず自然の中で自分を保とうとする動物」
という感覚を強く受けました。
一方でオルタスは、
現在の家庭犬らしい、
👉 人との関係性の中で動く犬
として非常に分かりやすい反応を示していました。
同じ6歳でも、
ここまで行動構造が違うことは非常に興味深く感じられました。
■ おわりに
犬を見ていると、
つい「人との関係」に目が向きます。
しかし今回フェルを見ていると、
👉 人より先に空間を見る動物
としての本来の姿を少し感じました。
犬は人のためだけに存在しているのではなく、
本来は、
👉 自分で環境を読み
👉 距離を取り
👉 状態を調整しながら生きる動物
なのだと思います。
フェルとオルタスの違いは、
犬という動物の幅の広さを改めて感じさせる観察となりました




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