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犬学⑫ 犬はなぜ前脚をかけるのか

  • 6月27日
  • 読了時間: 3分

― 犬が人に体重を預ける理由を考える ―


アルテミス通信第39号 



かわいい行動?


犬が人の膝に飛び乗ったり、前脚をかけたりする姿を見て、


「甘えている」

「懐いている」


と感じる方は多いと思います。


そのため、前脚をかけることは犬にとって自然な行動だと思われがちです。


しかし私は長い間、この行動に違和感を持っていました。


犬は本当に前脚をかける動物なのか


犬は歩く時も、走る時も、匂いを嗅ぐ時も四本の足を使います。


犬同士の関わりを見ていても、人間に対するように前脚をかける場面はほとんど見られません。


私はこれまで多くの犬たちと暮らし、多くの犬たちを観察してきました。


その中には、一度も人に前脚をかけなかった犬が何頭もいます。


その事実だけでも、前脚をかけることが犬にとって必須の行動ではないことが分かります。




ポンパドールが教えてくれたこと


以前の常在犬ポンパドールも、そのような犬の一頭でした。


ポンパドールは、私がボリビアで暮らしていた頃に義母が飼っていた犬です。


長い間つながれ、人との関わりも多くない環境で育ちました。


彼女は人が好きでした。


撫でられることも好きでした。


しかし、人に前脚をかけることはありませんでした。


他の犬たちが人に前脚をかける姿を見ていた私は、ポンパドールはどうなのだろうと思いました。


そこで一度、彼女の前脚を私の膝へ乗せてみたことがあります。


しかしポンパドールはすぐに嫌がって前脚を降ろしてしまいました。


今思えば、ポンパドールは前脚をかけることを知らなかったのだと思います。


その代わり、顔をそっと押し付けて撫でてほしいことを伝えてきました。


人との関わり方は知っていても、前脚をかける必要はなかったのです。




人間を見て行動を変える犬たち


先日見学に来たラブラドールは、人を見ると立ち上がって前脚を人に預ける犬でした。


私は、その都度静かに行動を調整しました。


すると10分ほどで私にはその行動をしなくなりました。


しかし飼い主には、その後も前脚をかけ続けていました。


この姿を見て改めて感じたのです。


犬は人間をよく観察しています。


そして相手によって行動を変えています。


前脚をかける行動は、本能的に出るというより、人との生活の中で学習された行動なのではないでしょうか。



体への負担


もう一つ気になるのは体への影響です。


犬の体重は一般的に約60%を前脚、40%を後脚で支えています。


前脚を上げれば、その負担は後脚や腰へ移ります。


さらに飛びつきやジャンプを繰り返せば、着地の衝撃が関節へ加わります。


私は特に子犬を見ると心配になります。


成長途中の骨や関節に負担がかかるからです。


大型犬では人が転倒する事故にもつながります。


かわいい行動として見過ごされがちですが、体のことを考えれば決して無関係ではありませ

ん。


四本の足で生きるということ


前脚をかける犬が悪いわけではありません。


犬は人との暮らしの中で、その行動を覚えたのでしょう。


けれど犬にとって本当に大切なのは、人によじ登ることではなく、自分の四本の足で立ち、


自分の意思で歩き、自分の世界を探索することです。


前脚をかける姿を見るたびに、私はそんなことを考えています。

 
 
 

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