犬学⑯ アイコンタクトは本当に必要か
- 7月6日
- 読了時間: 4分
更新日:7月10日
― 犬の本来の姿に気づく瞬間 ―
アルテミス通信 第41号

■ 不安そうだった八ちゃん
先日、6か月のビーグルの八ちゃんが1泊2日のお試しお泊まりに来ました。
飼い主様は、
「本当に大丈夫でしょうか」
「一人で寂しくないでしょうか」
と、とても心配されていました。
八ちゃんもまた不安そうでした。
尻尾は股の間に入り、何度も飼い主様の顔を見上げます。
周囲を見るよりも、まず飼い主様を確認しているようでした。
最初は固まってしまい、なかなか動くこともできませんでした。
ところが1時間ほどすると変化が現れました。
八ちゃんは少しずつ歩き始めたのです。
地面の匂いを嗅ぎ、周囲を見回し、自分で環境を確認し始めました。
その姿を見て飼い主様が言われました。
「もう私を見なくなりました」
私は笑いながら、
「それでいいんですよ」とお答えしました。
犬が環境に関心を持ち始めた証拠だからです。
■ 「もう全然見ませんね」
翌朝になると八ちゃんはさらに落ち着いていました。
他の犬たちを観察しながら歩き、自分のペースで過ごしています。
お迎えに来られてその姿を見た飼い主様が、今度は笑顔でこう言われました。
「もう全然私を見ませんね」
その顔は本当に嬉しそうに輝いていました。
私はその表情が忘れられません。
■うちの子、ちゃんと犬とやれるんだ
多くの飼い主様は、自分の犬が他の犬たちと自然に過ごしている姿を見る機会がほとんどありません。
ドッグランで隠れてしまった。
吠えられた。
追いかけられた。
噛まれたことがある。
そんな経験から、
「うちの子は犬付き合いが苦手なんです」
と思い込んでしまうこともあります。
しかしアルテミス ワンダーランド(犬の散歩道)では、犬たちは自分のペースで近づき、自分のペースで離れていきます。
挨拶をして、
少し距離を取り、
また近づく。
そんなやり取りを繰り返しながら関係を作っていきます。
その様子を見ている飼い主様に、私はよくこうお話しします。
「犬はリードと飼い主がいない状態であれば、大概は挨拶ができますよ」
「そして犬同士では吠えません。なぜなら争いを避けるためです」
すると多くの飼い主様は驚かれます。
そして初めて目にするのです。
自分の犬が他の犬たちと普通に過ごしている姿を。
その瞬間、多くの飼い主様はとても嬉しそうな顔をされます。
「うちの子、ちゃんと犬とやれるんだ」そう思われるのでしょう。
■これが犬の本来の姿です
その後、私は匂いを嗅ぎながら歩いている犬を指してお話しします。
「地面の匂いを感じているでしょう」
「犬は匂いからたくさんの情報を集めています」
「そして、この行動によって神経状態も落ち着いていくのです」
そして最後にこう付け加えます。
「匂いをクンクン嗅ぎながら歩く姿こそが、犬の本来の姿です」
すると皆さん頷かれます。
犬が匂いを嗅ぐことなど当たり前のことだからです。
ところがその後で自分の犬を見るのです。
そこで次の気付きが生まれます。
「そうだよな」
「犬は本当はこうしているよな」
「でも、うちの子は……」
私はその瞬間がとても好きです。
犬を責めるのでもなく、
飼い主様を責めるのでもなく、
犬という動物をもう一度知る第一歩だからです。
■モヤモヤが晴れる瞬間
八ちゃんの飼い主様の輝くような笑顔を見ながら、私はそんなことを考えていました。
犬が犬らしく過ごせること。
そしてその姿を飼い主様が見ること。
それは犬にとっても、飼い主様にとっても、とても幸せなことなのだと思います。
多くの飼い主様は犬を愛しています。
だからこそ、
「何か違う気がする」
「どうしてうまくいかないのだろう」
という小さなモヤモヤを抱えています。
八ちゃんの飼い主様の笑顔は、そのモヤモヤが晴れた瞬間の笑顔だったのかもしれません。
「うちの子は大丈夫なんだ」
「ちゃんと犬として生きていけるんだ」
そんな安心が伝わってくるようでした。
私はこれからも、犬たちだけでなく、その気付きの瞬間を大切に見守っていきたいと思います。




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