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ポチが取り戻したもの
― 犬の世界を思い出した5日間 ― アルテミス通信第37号 CASE16 ■ 深い愛情の中で 13歳のミックス犬ポチが5日間のAWプログラムに来てくれました。 ポチには甲状腺の問題による脱毛があり、噛み癖もありました。 ポチと飼い主様はとても深く結びついていました。 初日、飼い主様は、「夜、寂しくて鳴いていませんか?」 と心配されていました。 それは自然なことだと思います。 大切な存在と離れれば寂しい。 人間ならそう考えるからです。 しかし私は、その言葉に少し違和感がありました。 そして今回、ようやく気づきました。 私たちは無意識のうちに、人間の気持ちを犬に投影しているのかもしれません。 ■ 犬たちの世界 犬にも感情はあります。 けれど犬は人間とは違います。 目の前に犬たちがいて、 匂いがあり、 静かな休息場所があり、 犬のルールがあります。 すると犬たちは少しずつ、その世界に入っていきます。 本当にどの犬も見事に適応していきます。 そこにいるだけで、毎日少しずつ変化していくのです。 ポチはとても犬が好きな犬でした。 誰かのそばにいたい犬でした。


犬学⑧ 犬に必要なのは運動ではなく行動かもしれません
犬の行動不足を、人間は運動不足と呼んでいるのかもしれません アルテミス通信第36号 はじめに 犬の話になると、 「大型犬には運動が必要です」 「若い犬は運動不足になります」 という言葉をよく耳にします。 確かに犬にも身体活動は必要です。 しかし私は最近、その「運動」という言葉そのものに少し疑問を持つようになりました。 なぜなら、人間と犬では体の構造も行動様式も大きく異なるからです。 人間と犬では体の使い方が違う 犬も人間も筋肉によって体を動かしています。 筋肉組織そのものに大きな違いはありません。 しかし運動能力を決めているのは筋肉だけではありません。 犬は四足歩行動物です。 体重は4本の肢に分散され、骨格や関節は効率よく移動できるように作られています。 さらに腱はバネのような役割を果たし、筋肉が生み出した力を無駄なく推進力へ変換しています。 犬が軽やかに走り、跳び、方向転換できるのは、筋肉だけではなく骨格や腱を含めた身体全体の構造によるものです。 人間は二足歩行であり、長時間座る生活を送っています。 そのため意識して歩いたり、筋力トレーニング


犬学① 犬はどこで休みたい動物なのか
― 犬と人間の快適さは同じではないー アルテミス通信 第35号 はじめに 犬を観察していると、興味深い共通点があります。 多くの犬は、休息するときに開放的な場所よりも、周囲を囲まれた静かな場所を選びます。 机の下。 家具の陰。 壁際。 ベッドの下。 屋外であれば木陰や建物の陰。 それは誰かに教えられた行動ではありません。 犬自身が自然に選択している行動です。 野生動物の多くは、休息時には外敵から身を守りやすい場所を利用します。 犬もまた、その祖先から受け継いだ行動特性として、周囲を見渡せる一方で、自分の背後や 側面が守られている場所を好む傾向があります。 そのため、狭く、暗く、静かな空間は、犬にとって安心しやすい環境の一つと考えられます。 人間と犬の感じ方は同じではない 以前、ある飼い主さんから、 「リビングが犬にとって良くないなら、どこが良いのですか?」 という質問を受けたことがありました。 私はトイレや廊下の一角など、人の出入りが少なく静かな場所を提案しました。 すると返ってきた答えは、 「暗くないですか?」でした。 このやり取りはとても印象


なぜ子犬にパピーコースが必要なのか
犬は犬が育てる アルテミス通信 第34号 ■ アルテミスで見えてきたこと この2年間、アルテミスで多くの犬たちをお預かりしてきました。 その中で、私は一つの大きな気づきを得ました。 私は長い間、子犬は自然に育つものだと思っていました。 ところが実際には、子犬たちが自然に育つためには「環境」が必要だったのです。 母犬や兄弟犬がいて、年上の犬がいて、自由に動き回りながら経験を積める環境です。 私が当たり前だと思っていたものは、実は決して当たり前ではありませんでした。 アルテミスで犬たちを観察する中で、そのことを強く実感するようになったのです。 ■ エマちゃんが教えてくれたこと 先日、1歳のトイプードルのエマちゃんが遊びに来ました。 最初はワンダーランドへ降りることができず、入口から犬たちの様子を見ていました。 しかし午後になると、ぽんちゃんと走り回り、アマーリエにも飛びついて遊んでいました。 私は何かを教えたわけではありません。 エマちゃんは環境を観察し、犬たちを観察し、自分のタイミングでその輪の中へ入っていったのです。 その姿は、私に改めて大切なこ


知恵のある子 モカ
― 「犬は人を見ている」 ― アルテミス通信第33号 CASE15 はじめに 今回アルテミスに滞在したのは、6か月齢のフラッティドゥードル、モカちゃんです。 モカは特に大きな問題を抱えた犬ではありませんでした。 人が大好きで、犬にも興味があります。 一方で、若い犬らしく飛びつきやリードの引っ張り、甘噛みは見られました。 しかし私は今回、それらの行動以上にモカの「知恵」に興味を持ちました。 モカとの駆け引き 滞在中、モカは何度も私を観察していました。 私が部屋で待っていると、ワンダーランドの外からこちらを見ています。 ところが近づくと逃げます。 離れるとまたこちらを見ています。 そんなことを何度も繰り返しました。 部屋へ入る時も同じでした。 簡単には入りません。 しかし一緒に部屋へ入り、合図を出すと座ります。 その間に私が出ると落ち着いて過ごします。 私はその様子を見ながら、まるで小さな駆け引きをしているようだなと思いました。 若い犬は毎日学んでいる 私はこれまで多くの犬を見てきました。 その中で感じるのは、若い犬は驚くほど多くのことを学んでいると


なぜ環境が変わると下痢をするのか
― 腸と自律神経、そして腸内細菌群の関係 ― アルテミス通信 第32号 犬を知る① ■ はじめに アルテミスで犬をお預かりしていると、環境に慣れ始めた頃や帰宅後に便が柔らかくなる犬がいます。 下痢というと病気を連想しがちですが、必ずしもそうとは限りません。 今回は犬の腸と自律神経、そして腸内細菌群の働きから、その理由を考えてみたいと思います。 ■ 犬の胃は比較的丈夫にできている 犬は肉食動物を祖先にもつ動物です。 そのため胃酸は非常に強く、多くの細菌や異物に対して防御する能力を持っています。 もちろん何を食べても平気というわけではありません。 しかし人間と比べると、胃そのものはかなり丈夫な器官です。 一方で、環境変化の影響を受けやすいのは胃よりも腸です。 犬がホテルに来て緊張したり、引っ越しや旅行で環境が変わったりした時に起こる軟便や下痢の多くは、胃ではなく腸の反応として現れます。 ■ 腸は「第二の脳」と呼ばれている 近年、腸には非常に多くの神経細胞が存在することが分かってきました。 その数は脊髄に匹敵するとも言われています。 腸は単なる消化器官


マロンがたどった短くて長い道のり
― 自由意思での初めての一歩 ― アルテミス通信 第31号 CASE 14 ■ はじめに 今回ご紹介するのは、ミニチュアダックスフンドのマロン。 1歳11か月の去勢済みの男の子です。 今回マロンには5日間のAW(Artemis Wonderland)プログラムを体験してもらいました。 到着したマロンは、私にも常在犬ジャーマンシェパードのアマーリエにも激しく吠えていました。 食事もほとんど食べられず、落ち着くことができませんでした。 アマーリエは全く反応しませんでしたが、マロンにとっては大きな壁だったようで、吠えながら距離を取り回避していました。 ■ 自由に歩けない犬 最近私は、多くの犬たちを観察する中であることに気づいています。 それは、自分の意思で歩けない犬が思っている以上に多いということです。 マロンもその一頭でした。 ワンダーランドへ出ても落ち着かず、すぐに自室へ戻ろうとします。 2日目にはポメラニアンの小さな戦士 ぽんちゃんが遊びに誘ってくれましたが応じることはできませんでした。 吠えながら自室へ戻り、周囲を警戒していました。...


老犬カールの可能性を信じて
― それでも まだできることがある ― アルテミス通信第30号 CASE 12 ■ 18歳のトイプードル、カール。 今回の滞在で、カールは何度も自力で立ち続けました。 時間にして15分以上。 しかも一度だけではありません。 身体を小さく揺らしながら重心を探し、時には一点で支えながら、自分で姿勢を保っていました。 私はその姿を見ながら、犬の身体が持つ記憶の深さを改めて感じていました。 ■ 来所当初のカール カールは来所初日、食事をほとんど取りませんでした。 口にしたのは水分だけでした。 一日の大半を横になって過ごし、立位の保持も難しい状態でした。 飼い主様は、長時間立たせるために補助椅子を使用されていたそうです。 それでも私は、カールの身体にまだ力が残っているように感じていました。 前脚の位置。 重心の移動。 身体の揺れ方。 細かく観察していくと、完全に失われているわけではなかったのです。 ■ 前脚を交差させない 高齢犬では、立位の維持が難しくなると前脚が交差し始めることがあります。 前脚が交差すると重心が崩れやすくなり、さらに姿勢保持が難しくな


犬の自信は顔に出る
― ポメラニアン・クーちゃん、1年半の変化― アルテミス通信 第29号 CASE 11 ■ はじめに 犬は生まれつき臆病なのでしょうか。 犬は生まれつき吠えるのでしょうか。 私はそうは思いません。 今回ご紹介するのは、ポメラニアンのクーちゃん、3歳の男の子です。 今ではアルテミスに来ると、自分から建物に入り、部屋へ向かい、他の犬たちとも自然に過ごしています。 その姿は落ち着いていて、自信に満ちています。 しかし、初めて会った頃のクーちゃんは全く違いました。 ■ ペットショップで過ごした幼少期 クーちゃんは2023年生まれです。 ペットショップで長く残っていた子で、飼い主様が一目惚れして迎えられました。 しかし体調不良のため引き渡しが遅れ、生後5か月頃までショップで過ごすことになりまし た。 その間、人との触れ合いや犬同士の交流は十分ではありませんでした。 ガラス越しに人を見ることはできても、 実際に触れ合い、 様々な環境を経験し、 犬同士の関係を学ぶ機会は限られていたのです。 ■ 理想と現実 飼い主様はクーちゃんをとても可愛がっていました。 洋服


あずき、犬社会へ旅立つ
― 子犬たちは犬社会で育つ ― アルテミス通信 第28号 CASE 10 ■ はじめに お迎えに来られた飼い主様ご夫妻は、あずきちゃんの様子を見てとても喜ばれていました。 滞在中、私は何本も動画をお送りしていました。 ご夫妻はその様子を見ながら変化を感じてくださっていたようですが、実際に目の前で見るあずきちゃんは、また違って見えたのでしょう。 「なんだかあずきが変わったみたいですね」 そんな気持ちが自然に伝わってきました。 ご夫妻は決して過保護な方ではありません。 犬を囲い込んだり、過剰に管理したりするタイプでもありません。 それでも、 「他の犬たちの中に入って大丈夫だろうか」 「うまくやっていけるだろうか」 という不安はずっと持っておられたと思います。 甘噛みをする。 よく吠える。 落ち着きがない。 もちろん子犬としては決して珍しいことではありません。 しかし飼い主にとっては、それでも心配なものです。 そんなあずきちゃんが、多くの犬たちの中でどのように過ごすのか。 今回の滞在は、ご夫妻にとっても大きな挑戦だったと思います。 ■ 遊びにも経験が必


世界が少し広がった日
ートイプードル・モカの2泊3日 ― アルテミス通信第27号 CASE09 ■ はじめに 犬の変化は、必ずしも大きなものとは限りません。 走り回るようになった。 他の犬と遊べるようになった。 呼び戻しができるようになった。 そうした変化は誰の目にも分かります。 しかし本当に大切な変化は、もっと静かに起こることがあります。 今回ご紹介するのは、トイプードルのモカちゃん、5歳の女の子です。 ■ おびえた表情の奥にあったもの モカは到着した時から強い緊張状態にありました。 小さな体をさらに小さく見せるように身を固くし、周囲を警戒していました。 丸い可愛らしい顔立ちですが、目にはどこか怯えた表情がありました。 匂いを嗅ぐこともほとんどありません。 環境を探索することもありません。 犬にとって匂いを嗅ぐことは情報収集です。 周囲を理解し、安全を確認し、自分の居場所を見つけるための大切な行動です。 しかしモカには、その余裕がありませんでした。 ただ静かに周囲を見ながら時間を過ごしていました。 時折、他の犬からしつこく匂いを嗅がれたり、ちょっかいを出されたりする


ココが見つけた小さな一歩
― 自信を取り戻すとは ― アルテミス通信 第26号 CASE08 5歳のトイプードル、ココちゃんが2泊3日の滞在に来てくれました。 ココちゃんはこれまでアルテミスを2回利用していましたが、いずれも日帰りでした。 今回が初めてのお泊まりです。 飼い主様のお話では、来客に吠えることがあるとのことでした。 しかし滞在中、私はココちゃんの吠える声を一度も聞きませんでした。 来客にも。 他の犬にも。 スタッフにもです。 けれど、それはココちゃんが落ち着いていたからではありませんでした。 初日のココちゃんは、自分で行動することがほとんどできなかったのです。 ■ 動けない犬 部屋の扉を開けても、自分から出てくることはできません。 呼ばれてようやく出てくる。 そんな状態でした。 アルテミスワンダーランドへ出ても歩くことができません。 周囲を探索することもありません。 ただ立ち止まり、あるいは座り込んでしまうのです。 犬は本来、とても好奇心の強い動物です。 新しい環境に出れば、まず匂いを嗅ぎ、周囲を確認し、自分なりに情報を集めます。 しかしココちゃんには、その


小さな戦士ぽんちゃんのワンプロ2回戦
一度の経験が犬を変える ― アルテミス通信第25号 CASE07 5か月のポメラニアン、ぽんちゃんが再びアルテミスワンダーランドにやって来ました。 前回の相手は、同じポメラニアンのポコくんでした。 二頭は長時間ワンプロを続けましたが、その時のぽんちゃんはまだ少し遠慮がありました。 体格差もあり、ポコくんに押される場面も多く見られました。 特に印象的だったのは、ポコくんがぽんちゃんの背中に頭を乗せたり、ぽんちゃんの顔をぺろぺろ舐めていたことです。 ぽんちゃんは遊びには参加していましたが、どちらかといえば受け身の立場でした。 しかし、その経験は確実にぽんちゃんの中に残っていたようです。 ■ 前回とは違うぽんちゃん 今回の相手は6か月のジャックラッセルテリア、あずきちゃんです。 私は最初の数分で前回との違いに気付きました。 ぽんちゃんが自分から仕掛けていたのです。 前回は相手の動きを見ながら参加していた印象でしたが、今回は違いました。 自ら近づき、 プレイバウで誘い、 飛び跳ねながら 距離を詰めていきます。 一方のあずきちゃんは犬同士の遊び経験が少ない


小さくたってワンプロはお得意
― 小さな戦士たち ポメラニアンのポコとぽん― アルテミス通信 第24号 CASE06 ■ 3回目のアルテミス ポコは2025年8月生まれのポメラニアンです。 今回が3回目の来所となりました。 これまで2回は日帰り利用でしたが、今回は2泊3日の滞在です。 初回は環境を確認する時間が必要でしたが、今回は到着直後から自然な様子が見られまし た。 部屋の中でじっとしているよりも、 「外へ出たい」 という気持ちの方が強く、マットを引っ張ったり噛んだりする場面もありました。 環境への不安よりも、行動したい気持ちが前に出てきたように感じられました。 ■ ポメラニアン祭りの始まり この日は偶然、5カ月齢の女の子ポメラニアン・ぽんちゃんも来所しました。 ほぼ同世代のポメラニアン同士です。 最初の挨拶から非常に自然で、お互いの匂いを確認すると、すぐに遊びが始まりました。 まさにポメラニアン祭りの始まりです。 ■ 小さな戦士たち ぽんちゃんはとても小柄な女の子です。 飼い主様は、 ポコに「押しつぶされないだろうか」 と心配されていました。 しかし当のぽんちゃんは全く


「魔法を使いましたか?」
― キャバリエ6か月 ジェイの18時間 ― アルテミス通信 第23号 CASE05 ■ はじめに 昨日から今日にかけて、横浜から6か月齢のキャバリエの男の子、ジェイが滞在しました。 初めての環境。 ジェイは抱っこで来所しました。 最初のジェイは、少し不安そうな表情をしていました。 そして飼い主様ご家族も、とても心配そうな様子で帰って行かれました。 ■ 最初のあいさつ ジェイはまず、 アンボワーズ(プードルミックス14歳)、アマーリエ(ジャーマンシェパード10歳)とあいさつをしました。 常在犬たちは、 新しく来た犬に対して過剰に近づくことはありません。 まず距離を見て、匂いを読み、相手の状態を確認します。 ジェイも少し緊張しながら、空間や犬たちを観察していました。 その後、次に関わったのが柴犬のむぎ(2歳・雄)でした。 むぎは何度もアルテミスに来ているため、プロムナードの空間や犬同士の流れに慣れています。 ■ 最初の追いかけ むぎはジェイを追いました。 ジェイは最初、おびえて逃げていました。 そして時折、 👉 「助けてほしい」 というような目線を


甘えているのに、なぜトムは緊張していたのか
― ジャックラッセルテリア・4歳去勢雄のケース ― アルテミス通信 第22号 CASE04 ■ はじめに アルテミスペットセンターでは、犬の「問題行動」だけではなく、 👉 その犬がどのような状態で生活しているのか を観察しています。 今回のケースは、4歳半のジャックラッセルテリア・去勢雄でした。 来所理由は、 後ろ足周辺を触れさせない 爪切り時の防御反応 身体を押さえられると唸る というものでした。 またご家庭では、 👉 同居家族に対して吠え続ける 様子も見られていました。 ■ 「元気な犬」に見える犬 ジャックラッセルテリアは、 元気 活発 テンションが高い という印象を持たれることが多い犬種です。 しかし実際には、 👉 「元気」なのではなく、 👉 神経が休まりにくい状態 になっている犬も少なくありません。 今回のケースでも、 👉 常に周囲を気にしている 印象が強く見られました。 ■ 吠えないのに落ち着いていない 興味深かったのは、 👉 アルテミスではほとんど吠えなかったことです。 一般的には、「吠えない=落ち着いた」 と思われがちで


静かな猟犬 ベルの10日間
ブリタニースパニエルの高反応性と環境適応― アルテミス通信第21回 CASE 03 犬種:ブリタニースパニエル 名前:ベル 年齢:5歳 性別:雌(避妊済) 体重:15kg 滞在期間:10日間 居住地:豊川市 ■ はじめに ベルは10日間の滞在先を探しており、 事前見学を経てアルテミスペットセンターを利用しました。 見学時、飼い主様は施設環境や犬たちの過ごし方を確認され、 納得したうえで預託となりました。 初対面の印象としてベルは、 👉 「おとなしく、消極的な 問題の少ない犬」 という印象を受けるタイプでした。 しかし実際には、 👉 強い緊張と高い環境反応性 を持つ犬でした。 ■ 初日の状態 初日、ベルには強い流涎(よだれ)が見られました。 また、前肢を片方浮かせる行動も頻繁に確認されました。 これは単なる癖というより、 👉 緊張や自律神経反応 として観察されました。 対人反応は良好で、対犬反応も悪くありませんでした。 しかし積極的に関わるというより、 👉 周囲を観察しながら距離を取る 消極的なタイプでした。 攻撃性はなく、犬社会への適応そ


フェルとオルタス
― 狼犬とラブラドール・シェパードで見えた「成熟した距離感」の違い ― アルテミス通信第20号 CASE 02 ■ はじめに 本日、6歳の狼犬系個体「フェル」と、 6歳のラブラドール・シェパード系個体「オルタス」 の観察を行いました。 フェルは5カ月齢で去勢手術を受け、幼少期から訓練を受けてきた個体です。 また、オーナー様のお話では、遺伝子検査で約68%がウルフ系統とのことでした。 二頭は同じ空間で行動していましたが、 人との関わり方 空間の使い方 行動の出し方 にはかなり大きな違いが見られました。 今回は、その初期観察を記録として残したいと思います。 ■ オルタスの反応(ラブラドールとホワイトシェパードのミックス) オルタスは未去勢雄で、とても行動的でした。 環境への反応も速く、 人にも自分から近づいてきて、 👉 「撫でてほしい」 という行動を見せていました。 また、何かを訴えたい場面では、 👉 吠えて反応を求める様子も見られました。 ただ、その後、 空間が安定し自由に動ける状態になると、 👉 吠えはほとんど見られなくなりました。 これは


猫世界の真実③ 猫はあなたを見ていない
― 猫が感じている“環境という世界” ― アルテミス通信 第19号 猫はどのように世界を感じているのか?聴覚・嗅覚・空間の視点から猫の行動の理由を解説。ボリビアでの実体験をもとに猫の本質に迫ります ■ はじめに 猫は ・わずかな音に反応する ・匂いを長く嗅ぐ ・何もない空間を見つめる こうした行動を見せます。 人から見ると 👉 神経質 👉 気まぐれ に見えるかもしれません。 しかし実際には 👉 感覚が鋭いという話ではありません 👉 世界の捉え方そのものが違います 猫は 👉 見ているのではなく 👉 感じている動物です ■ 人間は「視覚」で世界を見ている 人間は主に 👉 目で世界を判断しています ・形 ・色 ・動き ・表情 そのため 👉 見えないものは存在しないと感じやすい ■ 猫は「音」で空間を読む 猫にとって音は 👉 空間の情報そのものです ・どこから来たか ・どのくらい離れているか ・何が動いているか 猫は 👉 見えないものを音で把握しています それは 👉 危険察知であり 👉 狩りの準備でもあります ■ 嗅覚は「時間の


猫世界の真実② 猫はなぜ狩りをするのか?
― 環境・本能・神経から読み解く猫の行動 ― アルテミス通信 第18号 猫はなぜ狩りをするのか?室内猫にも残る本能を、環境・神経・行動の構造から解説。保護猫の実例とともに猫の行動の本質を理解します。 ■ はじめに 猫はよく ・急に走り出す ・何もない空間を見つめる ・おもちゃに強く反応する こうした行動を見せます。 人から見ると 👉 気まぐれ 👉 遊んでいる ように見えるかもしれません。 しかしこれらは 👉 ただの癖ではありません 👉 猫の本能そのものです 猫は 👉 環境の中で自分の状態を決める動物です そしてその行動の基盤には 👉 狩りの構造があります。 ■ 猫は狩りで生きてきた動物 猫は本来 👉 単独で狩りをする動物です ・周囲を観察する ・距離を測る ・タイミングを待つ ・一気に動く この一連の流れが 👉 猫のすべての行動の基盤になっています つまり猫の行動は 👉 感情ではなく 👉 構造で成り立っています ■ ボリビアで見た猫の狩り 私がボリビアで暮らしていた頃、保護した猫たちは外の世界を知っていました。...
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