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ラブラドール・レトリバー、チハの6日間
~仲間との出会いが広げた世界~ アルテミス通信 第47号 警戒心から始まった6日間 AW若年コースに参加したラブラドール・レトリバーのチハ(♂・2歳・未去勢)。 初日のチハは警戒心が非常に強く、常在犬の小型ミックス アンボワーズに対して威嚇する場面が見られました。 その様子から、まだ他の犬たちと積極的に接する段階ではないと判断し、しばらくはアンボワーズ以外の犬とは会わせませんでした。 その後、アンボワーズとの関係はすぐに落ち着きましたが、チハは他の犬たちとは距離を置き、一頭で周囲を観察していることがほとんどでした。 どこか孤高という言葉が似合うような姿でした。 人との距離もまだ遠く、近くまで来ることはあっても、リードを持てる距離には入ってきません。 体に触れられることも受け入れられず、建物へ入れるときには毎回チハとの知恵比べが続きました。その状態は2日ほど続きました。 ラーラという「アルテミス犬」 そんなチハに大きな影響を与えたのが、ゴールデン・レトリバー♀1歳半のラーラです。 ラーラは幼い頃から何度もアルテミスで過ごし、社会性を身につけてきた「


ボストンテリア・エルが思い出した犬らしさ
アルテミス通信 第46号 緊張の中で始まった5日間 ボストンテリアのエル(1歳3か月・♂)が、5日間のAWコースを終えました。 ご家族からは、「びびりで神経質な子です」と伺っていました。 アルテミスに到着したエルは、まさにその言葉どおりでした。 耳は後ろへ倒れ、しっぽは下がり、体は小刻みに震えています。 目には緊張が表れ、飼い主の姿が見えなくなった後も、私へ痛いほどの視線を送り続けていました。 食欲もほとんどなく、おやつをかろうじて口にする状態がしばらくの間続きました。 初日には大型犬からマウントを受け、大きな恐怖を経験しました。 そのため、その後は大型犬との接触を避け、エルが安心して過ごせる環境を整えることにしました。 エルが見つけた安心できる場所 数日が過ぎると、エルは自分の部屋を安全な場所として受け入れるようになりました。 ご家族が持たせてくださったマットの上で落ち着いて休み、自分から部屋へ戻ることもできるようになりました。 一方で、自分から部屋を出ることは最後までできませんでした。 アルテミスワンダーランド(AW)へは抱いて連れて行く必要


ゴールデン・レトリバー、モカの6日間
~賢さと本能のはざまで~ アルテミス通信 第45号 新しい環境との出会い ゴールデン・レトリバーのモカ(♂・8か月・約25kg)が、6日間のAWパピーコースを終えました。 初日、モカは部屋へ入ることを強く嫌がり、何度もリードを抜いて逃げようとしました。 部屋へ入ってからも飼い主を探すように鳴き続け、新しい環境を受け入れるまでには時間が必要でした。 しかし、その様子は日を追うごとに変わっていきます。 3日目にはリードで自然に部屋へ入れるようになり、鳴くこともなくなりました。 アルテミス ワンダーランド(AW) の中でも落ち着いて行動できる時間が増え、自分の足で環境を利用する姿が見られるようになりました。 好奇心いっぱいの毎日 モカはとても好奇心旺盛な子でした。 庭へ出ると木の枝をくわえたり、葉をちぎったりすることが大好きで、気が付けば周囲には細かくちぎられた葉があちこちに散らばっています。 その様子を見ていたボクサーのBUFFYも興味を示し、モカの行動をじっと見つめていました。 犬たちは遊ぶだけではありません。 互いの行動に興味を持ち、観察すること


犬の社交場(DOGS FORUM)②
大型犬たち、それぞれの一日 ~5頭が見せた個性~ アルテミス通信 第45号 大型犬祭りの始まり 今回の犬の社交場(DOGS FORUM)は、大型犬4頭、小型犬1頭が集まる「大型犬祭り」となりました。 ゴールデン・レトリバーのモカ(♂・8か月・約25kg) ラブラドゥードルのVOL(♂・5歳・約17kg) ボクサーのBUFFY(♀・6歳・約28kg) フラットコーテッド・ドゥードルのモカ(♀・8か月・約23kg) パピヨン・シーズーMIXのビート(♂・1歳2か月・約6kg) それぞれが自由に過ごしながら、犬らしい姿をたくさん見せてくれました。 なお、ゴールデン・レトリバーのモカは、この日が ARTEMIS WONDERLAND(AW)パピーコース 最終日でした。 大型犬同士だからできる遊び 最初に目を引いたのは、ゴールデン・レトリバーのモカとラブラドゥードルのVOLによるワンプロです。。 歯を見せ、鼻にしわを寄せながら力強く組み合う姿は、初めて見る人なら「けんかでは?」と思うほど迫力がありました。 しかし、お互い本気で傷つけようとする様子はなく、大


THE 子犬 -カイの5日間-
ーAWパピーコースー アルテミス通信第 44号 はじめは、ごく普通の犬でした 5か月のミニチュア・シュナウザー、カイ 初めてAPCに来た日は、飼い主さんと離れて少し寂しそうにしていました。 部屋に入れたときには甘啼きしていました。 でも翌日には歩き始め、匂いを嗅ぎ、環境を探索し始めます。 子どもの順応性とは、本当に素晴らしいものです。 好奇心いっぱいの毎日 カイは、とにかく何にでも興味を示しました。 私が歩けば、後ろをちょろちょろ。 掃除を始めれば、モップやほうきに飛びつき、先をくわえて離しません。 仕事にならなくて困ることもありましたが、それも今では笑顔になるような光景でした。 遊び疲れると、今度は私の横へちょこんと座ります。 「撫でて。」 そう言っているような表情で見上げる姿も、本当に愛らしいものでした。 甘噛みも大切な勉強 興奮すると、時々私の手に歯を当てることがありました。 そのたびに伝え続けると、カイは「いけなかった」と理解した時、自分からへそテンを見せるようになりました。 素直に学び、素直に反省する。 その柔軟さも、この時期ならではの


犬の社交場① それぞれの楽しみ方
アルテミス通信第43号 カイ、初めての犬の社交場 この日は、5か月、6.5kgのミニチュア・シュナウザー「カイ」の元気いっぱいな行動から始まりました。 遊びたい気持ちが強く、トイプードルのエマ、マルプーのきなこ、ポメラニアンのポンちゃんへ次々と向かっていきます。 まだ相手との距離や力加減が分からない年頃です。 体重差もあり、3頭はカイの勢いに圧倒されてしまいました。 そこで最初は、カイを広場の中央につなぎ、動ける範囲を限定しました。 すると、それぞれ違った行動が見られました。 きなこは、カイが届く範囲をしっかり見極め、その少し外側まで近づいていきます。飛びつかれない距離を保ちながら、カイを誘うような仕草も見られました。 一方、ポンちゃんは何気なくカイの行動範囲へ入ってしまい、思わず冷やっとする場面もありました。 犬たちは、それぞれ違う方法で状況を判断していました。 ポンときなこの変幻自在な時間 ポンちゃんの足の調子があまり良くないことが分かると、きなこは無理に遊びへ誘うことはありませんでした。 二頭で葉っぱを取り合ったり、小さなくぼみに一緒に顔を


犬は犬の中で育つ きなこの軌跡
ーAWパピーコースー アルテミス通信第42号 他の犬と交流させたい 先日、6か月のマルプーのきなこが AW(アルテミス ワンダーランド) パピーコースを終えて帰宅しました。 きなこには特に大きな問題があったわけではありません。 ごく普通の小型犬の子犬です。 飼い主様の願いは、 「他の犬とも自然に交流できるようになってほしい」 というものでした。 見学に来られた際、AWで犬たちが自然に過ごす様子をご覧になり、私の説明にもすぐに納 得して、パピーコースを申し込んでくださいました。 初日はドアから出るのも慎重でした 初日の動画を見返すと、きなこは部屋のドアから出ることにも慎重でした。 周囲を気にしながら、おどおどと外へ出ていました。 他の犬に興味はあるものの、まだ自信を持って行動できる状態ではありませんでした。 しかし日を追うごとに表情は柔らかくなり、自分から行動する場面が増えていきました。 10頭を超える犬たちとの出会い この5日間で、きなこは10頭を超える犬たちと接しました。 シェパード、柴犬、フレンチブルドッグ、トイプードル、マルプー、ダッ


犬学⑯ アイコンタクトは本当に必要か
― 犬の本来の姿に気づく瞬間 ― アルテミス通信 第41号 ■ 不安そうだった八ちゃん 先日、6か月のビーグルの八ちゃんが1泊2日のお試しお泊まりに来ました。 飼い主様は、 「本当に大丈夫でしょうか」 「一人で寂しくないでしょうか」 と、とても心配されていました。 八ちゃんもまた不安そうでした。 尻尾は股の間に入り、何度も飼い主様の顔を見上げます。 周囲を見るよりも、まず飼い主様を確認しているようでした。 最初は固まってしまい、なかなか動くこともできませんでした。 ところが1時間ほどすると変化が現れました。 八ちゃんは少しずつ歩き始めたのです。 地面の匂いを嗅ぎ、周囲を見回し、自分で環境を確認し始めました。 その姿を見て飼い主様が言われました。 「もう私を見なくなりました」 私は笑いながら、 「それでいいんですよ」とお答えしました。 犬が環境に関心を持ち始めた証拠だからです。 ■ 「もう全然見ませんね」 翌朝になると八ちゃんはさらに落ち着いていました。 他の犬たちを観察しながら歩き、自分のペースで過ごしています。 お迎えに来られてその姿を見た飼い


犬学⑬ 犬の身体は飾りではなく備蓄である
ー食事制限と食べ物への執着を考えるー アルテミス通信 第40号 私が最初に見るもの 私は犬を見た時、まず身体つきを見ます。 肋骨は浮いていないだろうか。 筋肉は十分についているだろうか。 この子に生きるための備蓄はあるだろうか。 犬は人間のように病気になったら点滴で何年も生きられる動物ではありません。 食べられなくなれば、自らの脂肪や筋肉を使いながら生きようとします。 健康な時に作った身体こそが、その犬の備蓄なのです。 だから私は痩せた犬を見ると心配になります。 計量カップが決める食事 最近、食糞や拾い食い、食べ物への執着について相談を受けることがよくあります。 しかし実際に犬を見ると、痩せていることが少なくありません。 飼い主さんは驚きます。 なぜなら毎日きちんとフードを与えているからです。 フードの袋に書かれた量。 計量カップの目盛り。 その数字が正しいと信じています。 しかし犬は工業製品ではありません。 年齢も違えば活動量も違います。 季節によって必要なエネルギーも変わります。 私は計量カップより先に犬の身体を見ます。 犬は食事をコントロー


犬学⑫ 犬はなぜ前脚をかけるのか
― 犬が人に体重を預ける理由を考える ― アルテミス通信第39号 かわいい行動? 犬が人の膝に飛び乗ったり、前脚をかけたりする姿を見て、 「甘えている」 「懐いている」 と感じる方は多いと思います。 そのため、前脚をかけることは犬にとって自然な行動だと思われがちです。 しかし私は長い間、この行動に違和感を持っていました。 犬は本当に前脚をかける動物なのか 犬は歩く時も、走る時も、匂いを嗅ぐ時も四本の足を使います。 犬同士の関わりを見ていても、人間に対するように前脚をかける場面はほとんど見られません。 私はこれまで多くの犬たちと暮らし、多くの犬たちを観察してきました。 その中には、一度も人に前脚をかけなかった犬が何頭もいます。 その事実だけでも、前脚をかけることが犬にとって必須の行動ではないことが分かります。 ポンパドールが教えてくれたこと 以前の常在犬ポンパドールも、そのような犬の一頭でした。 ポンパドールは、私がボリビアで暮らしていた頃に義母が飼っていた犬です。 長い間つながれ、人との関わりも多くない環境で育ちました。 彼女は人が好きでした。


ココ、普通の犬への第一歩を踏み出す
― 色眼鏡を外したとき、見えてきたもの ― アルテミス通信 第38号 CASE17 5歳の雄トイプードル、ココちゃんが4泊5日のAW(アルテミス ワンダーランド)プログラムに来てくれました。 今回の滞在は、突然始まったものではありませんでした。 飼い主様は悩んでおられました。 子犬の頃から大切に育ててきたココちゃん。 けれど2歳頃から、来客や外の音、人や犬に激しく吠えるようになり、どうしたらよいのか わからなくなっていたそうです。 愛情をかけてきたつもりなのに、なぜこうなってしまったのだろう。 そんな思いを抱えておられました。 最初の2泊3日 そんな時、ご縁があってココちゃんはアルテミスで2泊3日の滞在を経験しました。 帰宅後、飼い主様は小さな変化に気づかれます。 いつもの強い抱っこ要求がなくなり、ココちゃんは時々様子を見に来ては、自分のマットへ 戻り、静かに過ごしていたそうです。 そしてアルテミス通信を読み、他の犬たちの変化を知る中で、 「思い切って預けてみよう」 と4泊5日のAWプログラムを選んでくださいました。 今回見えた変化 今回見えた


ポチが取り戻したもの
― 犬の世界を思い出した5日間 ― アルテミス通信第37号 CASE16 ■ 深い愛情の中で 13歳のミックス犬ポチが5日間のAWプログラムに来てくれました。 ポチには甲状腺の問題による脱毛があり、噛み癖もありました。 ポチと飼い主様はとても深く結びついていました。 初日、飼い主様は、「夜、寂しくて鳴いていませんか?」 と心配されていました。 それは自然なことだと思います。 大切な存在と離れれば寂しい。 人間ならそう考えるからです。 しかし私は、その言葉に少し違和感がありました。 そして今回、ようやく気づきました。 私たちは無意識のうちに、人間の気持ちを犬に投影しているのかもしれません。 ■ 犬たちの世界 犬にも感情はあります。 けれど犬は人間とは違います。 目の前に犬たちがいて、 匂いがあり、 静かな休息場所があり、 犬のルールがあります。 すると犬たちは少しずつ、その世界に入っていきます。 本当にどの犬も見事に適応していきます。 そこにいるだけで、毎日少しずつ変化していくのです。 ポチはとても犬が好きな犬でした。 誰かのそばにいたい犬でした。


犬学⑧ 犬に必要なのは運動ではなく行動かもしれません
犬の行動不足を、人間は運動不足と呼んでいるのかもしれません アルテミス通信第36号 はじめに 犬の話になると、 「大型犬には運動が必要です」 「若い犬は運動不足になります」 という言葉をよく耳にします。 確かに犬にも身体活動は必要です。 しかし私は最近、その「運動」という言葉そのものに少し疑問を持つようになりました。 なぜなら、人間と犬では体の構造も行動様式も大きく異なるからです。 人間と犬では体の使い方が違う 犬も人間も筋肉によって体を動かしています。 筋肉組織そのものに大きな違いはありません。 しかし運動能力を決めているのは筋肉だけではありません。 犬は四足歩行動物です。 体重は4本の肢に分散され、骨格や関節は効率よく移動できるように作られています。 さらに腱はバネのような役割を果たし、筋肉が生み出した力を無駄なく推進力へ変換しています。 犬が軽やかに走り、跳び、方向転換できるのは、筋肉だけではなく骨格や腱を含めた身体全体の構造によるものです。 人間は二足歩行であり、長時間座る生活を送っています。 そのため意識して歩いたり、筋力トレーニング


犬学① 犬はどこで休みたい動物なのか
― 犬と人間の快適さは同じではないー アルテミス通信 第35号 はじめに 犬を観察していると、興味深い共通点があります。 多くの犬は、休息するときに開放的な場所よりも、周囲を囲まれた静かな場所を選びます。 机の下。 家具の陰。 壁際。 ベッドの下。 屋外であれば木陰や建物の陰。 それは誰かに教えられた行動ではありません。 犬自身が自然に選択している行動です。 野生動物の多くは、休息時には外敵から身を守りやすい場所を利用します。 犬もまた、その祖先から受け継いだ行動特性として、周囲を見渡せる一方で、自分の背後や 側面が守られている場所を好む傾向があります。 そのため、狭く、暗く、静かな空間は、犬にとって安心しやすい環境の一つと考えられます。 人間と犬の感じ方は同じではない 以前、ある飼い主さんから、 「リビングが犬にとって良くないなら、どこが良いのですか?」 という質問を受けたことがありました。 私はトイレや廊下の一角など、人の出入りが少なく静かな場所を提案しました。 すると返ってきた答えは、 「暗くないですか?」でした。 このやり取りはとても印象


なぜ子犬にパピーコースが必要なのか
犬は犬が育てる アルテミス通信 第34号 ■ アルテミスで見えてきたこと この2年間、アルテミスで多くの犬たちをお預かりしてきました。 その中で、私は一つの大きな気づきを得ました。 私は長い間、子犬は自然に育つものだと思っていました。 ところが実際には、子犬たちが自然に育つためには「環境」が必要だったのです。 母犬や兄弟犬がいて、年上の犬がいて、自由に動き回りながら経験を積める環境です。 私が当たり前だと思っていたものは、実は決して当たり前ではありませんでした。 アルテミスで犬たちを観察する中で、そのことを強く実感するようになったのです。 ■ エマちゃんが教えてくれたこと 先日、1歳のトイプードルのエマちゃんが遊びに来ました。 最初はワンダーランドへ降りることができず、入口から犬たちの様子を見ていました。 しかし午後になると、ぽんちゃんと走り回り、アマーリエにも飛びついて遊んでいました。 私は何かを教えたわけではありません。 エマちゃんは環境を観察し、犬たちを観察し、自分のタイミングでその輪の中へ入っていったのです。 その姿は、私に改めて大切なこ


知恵のある子 モカ
― 「犬は人を見ている」 ― アルテミス通信第33号 CASE15 はじめに 今回アルテミスに滞在したのは、6か月齢のフラッティドゥードル、モカちゃんです。 モカは特に大きな問題を抱えた犬ではありませんでした。 人が大好きで、犬にも興味があります。 一方で、若い犬らしく飛びつきやリードの引っ張り、甘噛みは見られました。 しかし私は今回、それらの行動以上にモカの「知恵」に興味を持ちました。 モカとの駆け引き 滞在中、モカは何度も私を観察していました。 私が部屋で待っていると、ワンダーランドの外からこちらを見ています。 ところが近づくと逃げます。 離れるとまたこちらを見ています。 そんなことを何度も繰り返しました。 部屋へ入る時も同じでした。 簡単には入りません。 しかし一緒に部屋へ入り、合図を出すと座ります。 その間に私が出ると落ち着いて過ごします。 私はその様子を見ながら、まるで小さな駆け引きをしているようだなと思いました。 若い犬は毎日学んでいる 私はこれまで多くの犬を見てきました。 その中で感じるのは、若い犬は驚くほど多くのことを学んでいると


犬学⑭ なぜ環境が変わると下痢をするのか
― 腸と自律神経、そして腸内細菌群の関係 ― アルテミス通信 第32号 ■ はじめに アルテミスで犬をお預かりしていると、環境に慣れ始めた頃や帰宅後に便が柔らかくなる犬がいます。 下痢というと病気を連想しがちですが、必ずしもそうとは限りません。 今回は犬の腸と自律神経、そして腸内細菌群の働きから、その理由を考えてみたいと思います。 ■ 犬の胃は比較的丈夫にできている 犬は肉食動物を祖先にもつ動物です。 そのため胃酸は非常に強く、多くの細菌や異物に対して防御する能力を持っています。 もちろん何を食べても平気というわけではありません。 しかし人間と比べると、胃そのものはかなり丈夫な器官です。 一方で、環境変化の影響を受けやすいのは胃よりも腸です。 犬がホテルに来て緊張したり、引っ越しや旅行で環境が変わったりした時に起こる軟便や下痢の多くは、胃ではなく腸の反応として現れます。 ■ 腸は「第二の脳」と呼ばれている 近年、腸には非常に多くの神経細胞が存在することが分かってきました。 その数は脊髄に匹敵するとも言われています。 腸は単なる消化器官ではありま


マロンがたどった短くて長い道のり
― 自由意思での初めての一歩 ― アルテミス通信 第31号 CASE 14 ■ はじめに 今回ご紹介するのは、ミニチュアダックスフンドのマロン。 1歳11か月の去勢済みの男の子です。 今回マロンには5日間のAW(Artemis Wonderland)プログラムを体験してもらいました。 到着したマロンは、私にも常在犬ジャーマンシェパードのアマーリエにも激しく吠えていました。 食事もほとんど食べられず、落ち着くことができませんでした。 アマーリエは全く反応しませんでしたが、マロンにとっては大きな壁だったようで、吠えながら距離を取り回避していました。 ■ 自由に歩けない犬 最近私は、多くの犬たちを観察する中であることに気づいています。 それは、自分の意思で歩けない犬が思っている以上に多いということです。 マロンもその一頭でした。 ワンダーランドへ出ても落ち着かず、すぐに自室へ戻ろうとします。 2日目にはポメラニアンの小さな戦士 ぽんちゃんが遊びに誘ってくれましたが応じることはできませんでした。 吠えながら自室へ戻り、周囲を警戒していました。...


老犬カールの可能性を信じて
― それでも まだできることがある ― アルテミス通信第30号 CASE 12 ■ 18歳のトイプードル、カール。 今回の滞在で、カールは何度も自力で立ち続けました。 時間にして15分以上。 しかも一度だけではありません。 身体を小さく揺らしながら重心を探し、時には一点で支えながら、自分で姿勢を保っていました。 私はその姿を見ながら、犬の身体が持つ記憶の深さを改めて感じていました。 ■ 来所当初のカール カールは来所初日、食事をほとんど取りませんでした。 口にしたのは水分だけでした。 一日の大半を横になって過ごし、立位の保持も難しい状態でした。 飼い主様は、長時間立たせるために補助椅子を使用されていたそうです。 それでも私は、カールの身体にまだ力が残っているように感じていました。 前脚の位置。 重心の移動。 身体の揺れ方。 細かく観察していくと、完全に失われているわけではなかったのです。 ■ 前脚を交差させない 高齢犬では、立位の維持が難しくなると前脚が交差し始めることがあります。 前脚が交差すると重心が崩れやすくなり、さらに姿勢保持が難しくな


犬の自信は顔に出る
― ポメラニアン・クーちゃん、1年半の変化― アルテミス通信 第29号 CASE 11 ■ はじめに 犬は生まれつき臆病なのでしょうか。 犬は生まれつき吠えるのでしょうか。 私はそうは思いません。 今回ご紹介するのは、ポメラニアンのクーちゃん、3歳の男の子です。 今ではアルテミスに来ると、自分から建物に入り、部屋へ向かい、他の犬たちとも自然に過ごしています。 その姿は落ち着いていて、自信に満ちています。 しかし、初めて会った頃のクーちゃんは全く違いました。 ■ ペットショップで過ごした幼少期 クーちゃんは2023年生まれです。 ペットショップで長く残っていた子で、飼い主様が一目惚れして迎えられました。 しかし体調不良のため引き渡しが遅れ、生後5か月頃までショップで過ごすことになりまし た。 その間、人との触れ合いや犬同士の交流は十分ではありませんでした。 ガラス越しに人を見ることはできても、 実際に触れ合い、 様々な環境を経験し、 犬同士の関係を学ぶ機会は限られていたのです。 ■ 理想と現実 飼い主様はクーちゃんをとても可愛がっていました。 洋服
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