老犬カールの可能性を信じて
- 4 日前
- 読了時間: 3分
更新日:3 日前
― それでも まだできることがある ―
アルテミス通信第30号 CASE 12

■ 18歳のトイプードル、カール。
今回の滞在で、カールは何度も自力で立ち続けました。
時間にして15分以上。
しかも一度だけではありません。
身体を小さく揺らしながら重心を探し、時には一点で支えながら、自分で姿勢を保っていました。
私はその姿を見ながら、犬の身体が持つ記憶の深さを改めて感じていました。
■ 来所当初のカール
カールは来所初日、食事をほとんど取りませんでした。
口にしたのは水分だけでした。
一日の大半を横になって過ごし、立位の保持も難しい状態でした。
飼い主様は、長時間立たせるために補助椅子を使用されていたそうです。
それでも私は、カールの身体にまだ力が残っているように感じていました。
前脚の位置。
重心の移動。
身体の揺れ方。
細かく観察していくと、完全に失われているわけではなかったのです。

■ 前脚を交差させない
高齢犬では、立位の維持が難しくなると前脚が交差し始めることがあります。
前脚が交差すると重心が崩れやすくなり、さらに姿勢保持が難しくなります。
今回私は、最初から前脚の位置を丁寧に整え、交差しないようにポジションを固定しました。
以前は長時間保持のために補助椅子を使ったこともありましたが、今回は使用していません。
カール自身が、自分で支えられる位置を探しながら立っていました。

■ 「生きる力」は身体に現れる
変化は立位だけではありませんでした。
食事も徐々に取れるようになり、表情も少しずつ変わっていきました。
目の力。
顔つき。
周囲への反応。
静かな変化でしたが、確実に変わっていったのです。
口にヨーグルトをつけながら食事をしている姿を見た時、私は嬉しくなりました。
高齢犬では、「もう年だから」と多くのことを諦められてしまうことがあります。
けれど、環境や身体の支え方、人との距離感によって、犬は驚くほど変化することがあります。

■ 老犬にも、まだ出来ることがある
私は今回、改めて感じました。
老犬の介護とは、単に「できなくなったことを補う」だけではないのだと。
その犬がまだ持っている力を見つけ、支えていくこと。
その積み重ねなのだと思います。
もちろん、18歳という年齢を考えれば、若い頃のようにはいきません。
それでもカールは今回、再び自分の足で立っていました。
静かに揺れながら。
自分の身体を支えながら。
そしてその表情は、以前よりもずっと生き生きとして見えました。
■ カールが教えてくれたこと
私は長年、さまざまな動物たちの行動を観察してきました。
どこを支えれば立ちやすいのか。
どの姿勢なら、自分の力を使えるのか。
犬が今、何をしようとしているのか。
どのような環境なら力を発揮できるのか。
そうしたことを見極めながら向き合ってきました。
今回私が見たのは、奇跡ではありません。
カール自身が持っていた力です。
私たちは時に、「もう無理だろう」と決めつけてしまいます。
けれど犬たちは、ときにその予想を超える姿を見せてくれることがあります。
立ちたい。
食べたい。
周囲を見たい。
生きたい。
その気持ちは、年齢だけで失われるものではありません。
そして私自身もまた、
まだお手伝いできることがあることを教えてもらいました。




コメント