ココが見つけた小さな一歩
- 2 日前
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― 自信を取り戻すとは ―
アルテミス通信 第26号 CASE08

5歳のトイプードル、ココちゃんが2泊3日の滞在に来てくれました。
ココちゃんはこれまでアルテミスを2回利用していましたが、いずれも日帰りでした。
今回が初めてのお泊まりです。
飼い主様のお話では、来客に吠えることがあるとのことでした。
しかし滞在中、私はココちゃんの吠える声を一度も聞きませんでした。
来客にも。
他の犬にも。
スタッフにもです。
けれど、それはココちゃんが落ち着いていたからではありませんでした。
初日のココちゃんは、自分で行動することがほとんどできなかったのです。
■ 動けない犬
部屋の扉を開けても、自分から出てくることはできません。
呼ばれてようやく出てくる。
そんな状態でした。
アルテミスワンダーランドへ出ても歩くことができません。
周囲を探索することもありません。
ただ立ち止まり、あるいは座り込んでしまうのです。
犬は本来、とても好奇心の強い動物です。
新しい環境に出れば、まず匂いを嗅ぎ、周囲を確認し、自分なりに情報を集めます。
しかしココちゃんには、その余裕がありませんでした。
■ 子犬たちの横で
その日、ワンダーランドでは5か月齢の子犬たちが夢中になってワンプロをしていました。
追いかけたり、
転がったり、
飛び跳ねたり、
相手の様子を見ながら手加減したり。
犬らしい遊びが次々に展開されていました。
しかしココちゃんは、そのすぐ横にいながら参加しません。
怖がって逃げるわけでもありません。
攻撃するわけでもありません。
ただ、じっと見ているだけです。
そして時折、私や見学に来られていた別の飼い主様の膝へ飛び乗り、抱っこを求めました。
まるでそこだけが安心できる場所であるかのようでした。

■ 小さな変化
そんなココちゃんに変化が現れたのは、二日目の後半でした。
まず尻尾が上がりました。
そして少しずつ、
自分で歩き始めたのです。
周囲を見渡し、
自分の足で移動し、
環境を確認する。
当たり前のことのように思えるかもしれません。
しかし初日のココちゃんを見ていた私には、とても大きな変化でした。
犬が自信を取り戻し始める時、最初に現れるのは派手な変化ではありません。
自分で動く。
自分で確かめる。
自分で選ぶ。
そんな小さな行動の積み重ねです。
ココちゃんもまた、その第一歩を踏み出していたように見えました。

■ よく食べ、よく休む
実は飼い主様のお話では、前回別の施設へ宿泊した際には食事をほとんど食べられなかったそうです。
しかしココちゃんは、アルテミスでは最初から食事を完食していました。
しっかり食べることができる。
安心して休める。
これは犬にとって非常に大切なことです。
どれだけ立派な理論があっても、
食べられない、
眠れない、
落ち着けない状態では前に進めません。
ココちゃんは、その土台をしっかり作ることができていました。
■ 自信を取り戻すとは
私たちはつい、
吠えなくなった。
待てができるようになった。
呼び戻しができるようになった。
そんな目に見える変化ばかりに注目しがちです。
しかし本当に大切なのは、
犬自身が自分の力で環境と向き合えるようになることではないでしょうか。
歩く。
匂いを嗅ぐ。
周囲を見る。
距離を選ぶ。
それは犬が犬として生きるための基本的な行動です。
ココちゃんは2泊3日の滞在の中で、その入口に立ち始めました。
もしもう少し時間があれば、さらに多くの発見や経験が待っていたかもしれません。
それでも私は、最後に見せてくれた尻尾の高さと、自分の足で歩く姿を忘れません。
自信を取り戻すとは、特別なことではありません。
犬が本来持っている力を、少しずつ思い出していくことなのだと思います。




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